入れ歯の種類と選び方|保険・自費別に金属床・ノンクラスプ・オーバーデンチャーを比較

入れ歯の種類を保険・自費別に比較。レジン床義歯、金属床義歯、ノンクラスプデンチャー、インプラントオーバーデンチャーの特徴・費用の目安・メリット・デメリットをわかりやすく解説します。自分に合った入れ歯の選び方もご紹介します。
入れ歯には保険診療・自由診療を含め、さまざまな種類があります。
素材や設計によって、見た目や噛み心地、耐久性、費用の目安は大きく異なるため、「自分にはどの入れ歯が合うのだろう」と迷う方も少なくありません。
保険診療の入れ歯は比較的費用を抑えられる一方、自由診療では見た目や装着感、機能性を重視した選択肢もあります。
本記事では、レジン床義歯・金属床義歯・ノンクラスプデンチャー・インプラントオーバーデンチャーなど代表的な入れ歯の種類について、特徴や費用の目安、メリット・デメリット、選び方を歯科医師の視点からわかりやすく解説します。
入れ歯は「保険診療」と「自由診療」に大きく分けられる
入れ歯は、健康保険が適用される「保険診療」と、保険が適用されない「自由診療」に大きく分けられます。
まず知っておきたいのは、両者は費用だけでなく、使用できる素材や設計の自由度にも違いがあるという点です。
保険診療は噛む機能の回復を目的としており、使用できる素材や構造に一定のルールがあります。一方、自由診療では素材や設計の選択肢が広がり、見た目や装着感、噛み心地などにも配慮した入れ歯を選ぶことができます。
保険診療で作る入れ歯(レジン床義歯)の特徴
保険診療で作る入れ歯の多くは、歯ぐきに触れる土台(床)にレジンと呼ばれる歯科用プラスチックを使用した「レジン床義歯」です。全国共通の保険診療のルールに基づいて作製されるため、費用を抑えやすいことが大きなメリットです。
しかし、強度を保つために床をある程度厚くする必要があり、装着時の違和感や、食べ物や飲み物の温度を感じにくい場合があります。
とはいえ「修理」 や「調整」がしやすく、多くの方が選択しやすい入れ歯といえるでしょう。
自由診療の入れ歯で選べる主な種類
自由診療では、金属床義歯やノンクラスプデンチャー、インプラントオーバーデンチャーなど、さまざまな種類の入れ歯を選択できます。素材や設計の自由度が高く、床を薄く仕上げて装着感を高めたり、金属の留め具(クラスプ)が目立ちにくい設計にしたりすることも可能です。その分、費用は全額自己負担となりますが、見た目や快適性、耐久性を重視したい方に選ばれています。
総入れ歯と部分入れ歯の違い
入れ歯は、失った歯の本数によって「総入れ歯」と「部分入れ歯」に分けられます。
すべての歯を失った場合は総入れ歯、一部の歯が残っている場合は部分入れ歯を使用するのが一般的です。部分入れ歯では、残っている歯にクラスプ(留め具)をかけて支えるため、支えとなる歯への負担にも配慮した設計が鍵となります。
✅残っている歯を生かす「部分入れ歯」についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
【比較】代表的な入れ歯4種類の特徴と費用相場
ここでは代表的な入れ歯を4種類取り上げ、特徴と費用のおおよその目安を比較します。費用は一般的な相場で、素材や本数、お口の状態によって変動します。自費の入れ歯は保険適用外の全額自己負担で、仕上がりや効果には個人差があります。
| 種類 | 診療区分 | 費用目安 | 見た目 | 噛みやすさ | 特徴 | 向いている人 |
| レジン床義歯 | 保険 | 3割負担で数千〜1万円台 | 床が厚め | ★★★☆☆ | 費用を抑えやすく修理しやすい | 費用を抑えて入れ歯を作りたい方 |
| 金属床義歯 | 自費 | 片顎20〜60万円前後 | 薄く自然 | ★★★★☆ | 装着感に優れる | 装着感を重視する方 |
| ノンクラスプデンチャー | 自費 | 10〜30万円前後 | バネが目立ちにくい | ★★★☆☆ | 審美性に優れる | 見た目を重視する方 |
| インプラントオーバーデンチャー | 自費 | 総額40〜150万円前後 | 自然 | ★★★★☆ | ズレにくく安定した噛み心地 | しっかり噛みたい方・ズレを改善したい方 |
※費用は各歯科医院が公表している料金をもとにした一般的な目安です。実際の費用や治療回数は、お口の状態や使用する素材、設計によって異なります。自由診療は保険適用外(全額自己負担)です。
※噛みやすさは一般的な傾向を示したもので、お口の状態や設計によって異なります。
保険の入れ歯(レジン床義歯)
保険診療で作る入れ歯の多くは、レジン(歯科用プラスチック)を使用したレジン床義歯です。費用を抑えやすく、初めて入れ歯を作る方にも選ばれています。
3割負担の場合、費用は数千円〜1万円台が目安。また、保険診療の範囲で修理や調整を受けられる場合がある点もメリットです。
一方で、保険診療のルールに沿って作製されるため、使用できる素材や設計には一定の制限があります。
金属床義歯
金属床義歯は、歯ぐきに触れる床(しょう)の部分にコバルトクロムやチタンなどの金属を使用した入れ歯です。
床を薄く仕上げられるため装着感に優れ、食べ物や飲み物の温度も感じやすいことが特徴です。費用は片顎20〜60万円前後が目安で、使用する金属の種類によっては金属アレルギーへの配慮が必要な場合があります。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネ(クラスプ)の代わりに歯ぐきに近い色の樹脂製クラスプを使用した部分入れ歯です。
金属が目立ちにくく、自然な見た目を重視したい方に選ばれています。費用は10〜30万円前後が目安で、使用状況や設計によっては修理や再製作が必要になることがあります。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、顎の骨に埋め込んだ2本以上のインプラントを支えとして入れ歯を装着する治療法です。
通常の入れ歯よりズレにくく、安定した噛み心地が期待できます。
ただし外科手術が必要で、費用は総額40〜150万円前後が目安です。適応には顎の骨の状態など一定の条件があり、治療後も毎日の取り外しや定期的なメンテナンスが欠かせません。
自分に合う入れ歯の選び方|3つの視点
入れ歯選びで迷ったら、「見た目」「噛み心地」「費用・メンテナンス」の3つを基準に考えると、自分に合った入れ歯を選びやすくなります。
歯科医院で相談する前に希望を整理しておくと、より自分に合った治療方法を見つけやすくなるでしょう。
見た目・審美性で選ぶ
前歯など目立つ部分では、金属のバネが見えることを気にされる方も少なくありません。
自然な見た目を重視する場合は、金属のバネが目立ちにくいノンクラスプデンチャーが選択肢になります。
噛み心地・安定性で選ぶ
しっかり噛みたい方や、入れ歯のズレが気になる方は、まず入れ歯の設計や調整が適切かを確認することが大切です。
そのうえで、総入れ歯の安定性に悩んでいる場合は、インプラントオーバーデンチャーという選択肢もあります。インプラントを支えとして入れ歯を装着することで、ズレを抑え、安定した噛み心地が期待できます。
費用とメンテナンスで選ぶ
入れ歯は作って終わりではありません。
快適に使い続けるためには、定期的な調整や修理、必要に応じた作り直しが必要です。
初期費用だけでなく、将来的なメンテナンス費用や通院のしやすさまで含めて考えることが、長く満足して使うためのポイントです。
なお、入れ歯は、お口の状態や残っている歯の本数、重視したいポイントによって適した種類が異なります。
✅当院で行っている入れ歯治療の種類や特徴について詳しく知りたい方は、「補綴(ブリッジ・入れ歯)治療」のページもあわせてご覧ください。
自費の入れ歯は医療費控除の対象になる場合がある
自費の入れ歯は費用が高額になることがありますが、噛む機能の回復を目的とした治療であれば、医療費控除の対象になる場合があります。
国税庁でも、医師や歯科医師による診療・治療に直接必要な義歯(入れ歯)の購入費用は、医療費控除の対象となる医療費として案内されています。
出典:国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の仕組み
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除の制度です。
控除対象額は「実際に支払った医療費 − 保険金などで補てんされた金額 − 10万円」で計算します(総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%が基準です)。控除額がそのまま還付されるわけではなく、所得税や住民税の負担軽減につながります。
なお、医療費控除額の上限は200万円です。
出典:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
医療費控除を利用できる場合は、実際の負担額を抑えられる可能性があります。費用面が気になる方は、事前に歯科医院へ見積書を依頼し、医療費控除についても確認しておくと安心です。
対象になる費用と申請方法
医療費控除の対象となるのは、入れ歯やインプラントなどの治療費だけではありません。
治療のために利用した公共交通機関の交通費や、生計を一にする家族の医療費も合算できる場合があります。医療費控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。
- 入れ歯・インプラントなどの治療費
- 診査・検査にかかった費用
- 治療のための公共交通機関の交通費
- 生計を一にする家族の医療費(合算可能)
| 年間の医療費 | 控除対象となる医療費の目安 | 計算例 |
| 30万円 | 20万円 | 30万円-10万円 |
| 60万円 | 50万円 | 60万円-10万円 |
| 100万円 | 90万円 | 100万円-10万円 |
※上記は医療費控除の計算例(控除対象となる医療費の目安)です。控除対象額がそのまま還付されるわけではありません。実際の税負担の軽減額は、所得や税率、保険金などによって異なります。
歯の治療費が医療費控除の対象になるかどうかの具体例は、国税庁のタックスアンサーでも確認できます。
出典:国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
また、上記の通り、医療費控除は「入れ歯」だけでなく、治療を目的とした「インプラント」などの費用が対象となる場合もあります。
インプラントは自由診療となるケースが多く、治療費も高額になりやすいため、治療を検討する際は医療費控除についても知っておきたいところです。
✅インプラント治療における医療費控除の対象条件や計算方法、申請の流れについて詳しく知りたい方は、「インプラントで医療費控除はいくら戻る?計算例と確定申告の手順を解説」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 保険の入れ歯でもしっかり噛めますか?
保険診療のレジン床義歯でも、日常生活に必要な噛む機能の回復は期待できます。
ただし、使用できる素材や設計には一定の制限があり、床が厚くなることで違和感を覚えたり、食べ物や飲み物の温度を感じにくくなったりする場合があります。見た目や装着感、噛み心地を重視する場合は、自由診療の入れ歯も選択肢の一つです。
Q. 金属床義歯とノンクラスプデンチャーはどちらがおすすめですか?
重視したいポイントによって異なります。装着感や耐久性を重視する場合は金属床義歯、金属のバネが目立ちにくい自然な見た目を重視する場合はノンクラスプデンチャーが向いています。
ただし、お口の状態によって適した治療法は異なるため、歯科医師と相談しながら選ぶとよいでしょう。
Q. インプラントオーバーデンチャーは総入れ歯の人しかできませんか?
いいえ。インプラントオーバーデンチャーは総入れ歯だけでなく、一部の症例では部分入れ歯に応用されることもあります。
ただし、適応は顎の骨の状態や残っている歯の本数などによって異なるため、詳しくは歯科医院で診査・診断を受ける必要があります。
Q. 自費の入れ歯は医療費控除の対象になりますか?
噛む機能の回復を目的とした治療であれば、自費の入れ歯も医療費控除の対象となる場合があります。
対象となるかどうかは治療内容などによって異なるため、詳しくは国税庁の案内や歯科医院でご確認ください。
Q. 入れ歯はどのくらいで作れますか?
治療期間や通院回数は、保険診療か自由診療か、お口の状態、調整の回数などによって異なります。また、インプラントオーバーデンチャーは外科手術を伴うため、通常の入れ歯より治療期間が長くなることがあります。
詳しい治療期間は診査・診断後にご案内します。
Q. 自分に合う入れ歯はどのように選べばよいですか?
入れ歯を選ぶ際は、見た目・噛み心地・費用やメンテナンスの3つを基準に考えると選びやすくなります。
なお、お口の状態や残っている歯の本数によって適した入れ歯は異なります。まずは歯科医院で診査を受け、ご自身に合った治療方法を相談すると安心です。
まとめ|入れ歯は種類ごとの特徴を知り、納得して選ぶ
入れ歯は、保険診療と自由診療で費用や見た目、装着感、噛み心地が大きく異なります。
どの入れ歯が適しているかは、お口の状態や残っている歯の本数、何を優先したいかによって変わります。まずはそれぞれの特徴を知り、ご自身に合った選択をするとよいでしょう。
- 保険の入れ歯(レジン床義歯)は、費用を抑えやすく、初めて入れ歯を作る方にも選ばれている
- 金属床義歯は、床を薄く作れるため装着感に優れ、食べ物や飲み物の温度も感じやすいことが特徴
- ノンクラスプデンチャーは、金属のバネが目立ちにくく、見た目を重視する方に適している
- インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯のズレを抑え、安定した噛み心地を重視する方の選択肢
- 自由診療の入れ歯は、条件を満たせば医療費控除の対象となる場合がある
「自分にはどの入れ歯が合うのか」「費用はどのくらいか」といった疑問は、お口の状態を確認してもらったうえで判断するとよいでしょう。
まずは気になることがあれば、歯科医院へご相談を。
ご自身に合った治療方法を検討しましょう。
✅いとしま総合歯科インプラントクリニックの診療案内はこちらをご覧ください。
✅入れ歯の種類や費用についてはこちらをご覧ください。
入れ歯治療で知っておきたいリスク・注意点
入れ歯は種類にかかわらず、快適に使い続けるためには定期的な調整やメンテナンスが欠かせません。また、自由診療の入れ歯は保険適用外(全額自己負担)であり、費用や治療回数はお口の状態や治療内容によって異なります。
- 自由診療の入れ歯は保険適用外(全額自己負担)で、費用や治療回数は診査・診断後に個別にご案内します。
- ノンクラスプデンチャーは、素材の特性上、設計や使用状況によっては破損し、修理や再製作が必要になる場合があります。
- 金属床義歯は、使用する金属の種類によっては金属アレルギーへの配慮が必要な場合があります。
- インプラントオーバーデンチャーは外科手術を伴い、腫れ・痛み・出血・感染などのリスクがあります。
- 部分入れ歯は、残っている歯に負担がかかることがあるため、定期的なメンテナンスが重要です。
この記事の監修者

いとしま総合歯科インプラントクリニック
院長 星元 健佑(歯科医師)
■監修者コメント
私が診療において常に心がけているのは、「自分の家族だったらどの治療を選択するか」という視点です。
治療法については、可能な選択肢のメリット・デメリットを丁寧にご説明し、そのうえで適切と考えられる治療をご提案いたします。 最終的な判断は患者様ご自身に委ねており、考えを押し付けることはありません。
また、自由診療のみを勧めることもなく、費用面のご不安にも配慮した診療を行っています。
当院では、定期的な勉強会やスタッフ教育を通じて医療の質向上に努めるとともに、歯科用CTや口腔内スキャナーを活用し、診断や治療計画に役立てています。
お口のことでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
■略歴
2016年 長崎大学歯学部 卒業
2017年 鹿児島大学にて臨床研修修了(口腔外科領域を中心に研鑽)
2018年 オパールデンタルクリニックで特にインプラントやセラミック治療の技術を習得
2022年 カナダへ単身で赴任
帰国後 九州の複数の歯科診療所に勤務
2024年 いとしま総合歯科インプラントクリニック 院長就任





