虫歯じゃないのに歯が痛くなる“非歯原性歯痛”とは?

虫歯じゃないのに歯が痛いという経験はありませんか?実は歯の痛みには虫歯だけでなく、さまざまな原因があります。歯自体の問題から来る痛みもあれば、一見歯が痛んでいるように感じても、全く別の部位が原因となっている「非歯原性歯痛」というケースも少なくありません。
本記事では、虫歯以外で歯が痛くなるさまざまな原因と、見逃されがちな「非歯原性歯痛」について詳しく解説します。原因不明の歯の痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にして適切な診療科での受診につなげてください。
歯が原因の歯痛と非歯原性歯痛の違い

歯が原因の痛みは、虫歯や歯周病などが起因するため特定の歯に症状が集中しやすく、冷温刺激や噛み合わせで痛みが誘発されることが特徴です。
一方、非歯原性歯痛ではレントゲン検査に異常が見られない場合も多いです。痛みの箇所が複数の歯に移動し、精神的なストレスや神経の障害など多岐にわたる要因が絡むことがあります。以下に両者のおもな違いをまとめました。
分類 | 歯が原因の歯痛 | 非歯原性歯痛 |
特徴 | ・特定の歯の異常が原因・冷温刺激などで痛み発症 | ・レントゲンに異常が映らないことが多い・痛む歯や箇所が変わる場合あり |
代表例 | 歯髄炎、歯周病、知覚過敏、歯根膜炎など | 神経障害性歯痛、筋・筋膜性歯痛、上顎洞性歯痛、心臓性歯痛など |
自分の痛みがどちらに当てはまるのか把握することで、適切な治療へつなげやすくなるでしょう。
虫歯以外での歯が原因の痛み

虫歯が見当たらないのに痛みを感じる場合、歯そのものや歯ぐきの状態、かみ合わせなど、ほかの要因が関係していることがあります。ここでは以下8つについて、おもな症状や特徴を説明します。
- 歯髄炎
- 歯肉炎
- 歯周病
- 咬合性外傷
- 知覚過敏
- 歯根膜炎
- 親知らず
- ひび割れ
それぞれ見ていきましょう。
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歯髄炎
歯の内部にある神経や血管が集まった組織を「歯髄(しずい)」と呼びますが、ここで炎症が起こるのが歯髄炎です。虫歯が原因のことが多い一方で、強い衝撃や深い歯周ポケットからの感染などによっても発症する可能性も。症状としては、冷たい飲み物や熱い食べ物がしみるだけでなく、ズキズキと脈打つような痛みを伴うことも珍しくありません。
痛みが激しくなると集中力が落ち、夜に眠れないほど強くなるケースもあります。放置すると神経が死んでしまい、歯を残すために根管治療が必要になる可能性が高まるため、痛みを感じたら早めの受診を心がけましょう。
歯肉炎
歯肉炎は、歯ぐきに付着した歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって歯ぐきが炎症を起こす病気です。初期症状は歯ぐきの腫れや出血程度で、痛みを感じないことも多いため、気づかないうちに進行しやすいのが特徴です。しかし、歯肉炎を放置すると歯周組織がさらに侵され、歯周病へと悪化する可能性があります。
痛みや違和感がなくても、歯みがき時の出血や歯ぐきの赤みがあるなら要注意です。正しいブラッシングや歯間ケア、定期的なクリーニングを受けることで、歯肉炎から歯周病への進行を食い止められます。
歯周病
歯肉炎が進行して歯ぐきだけでなく、歯を支える骨や組織にも影響を及ぼす状態が歯周病です。日本人成人の多くが罹患しているともいわれるほど身近な疾患ですが、初期段階ではほとんど痛みが出ないため、自覚症状が乏しいのが厄介な点です。症状が進むと歯ぐきの腫れや出血、膿が出る、歯が揺れるなどのトラブルに発展し、やがて強い痛みが起こる場合も。
さらに放置すると歯が抜け落ちるリスクだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。定期検診で歯垢や歯石を除去し、ブラッシング指導を受けるなど、早期の予防とケアで歯周病の進行を抑えましょう。
咬合性外傷
咬合性外傷とは、歯ぎしりや食いしばりなど、噛み合わせの力が過度にかかることで歯や歯周組織がダメージを受ける状態を指します。歯のグラつきや顎関節の痛み、歯の根元が欠けるなど、多彩な症状を引き起こすことが特徴です。特定の歯に力が集中して負荷が強くなると、歯根膜や歯ぐきが炎症を起こし、噛むときに痛みを感じることも。
放置すると歯周病の進行を促進し、該当する歯が抜けやすくなるリスクが上がるため、マウスピースの装着や噛み合わせの調整など適切な治療を受けることが大切です。歯ぎしりや顎関節症の疑いがある方は、歯科医師と相談しながら対策を講じましょう。
知覚過敏
知覚過敏は歯の表面にあるエナメル質が薄くなり、歯ぐきが下がって象牙質が露出することで、冷たい飲み物や歯みがき時に鋭い痛みを感じる症状を指します。虫歯ほど深刻な疾患ではありませんが、あまりにも敏感で日常生活に支障をきたす場合は、何らかの処置が必要です。
原因は、過度なブラッシングや酸性の強い飲食物の頻繁な摂取などがあげられます。専用の歯磨き粉を使用し、歯科医院でコーティング処置を受けることも効果的です。ひどい痛みを伴うようになったときは、ほかの歯のトラブルと合併している可能性もあるため、早めに歯科医院へ行き、正しい対策を取りましょう。
歯根膜炎
歯根膜とは、歯の根と顎の骨をつなぐクッションのような組織です。そこに炎症が起こると、噛むときに強い痛みが生じ、歯が浮いたような感覚を覚えるようになります。おもな原因は虫歯や歯周病の細菌感染ですが、外傷や咬合異常も発症の一因となり得ます。
進行すると膿が溜まって歯ぐきが腫れるなど、日常生活に大きな支障をきたすケースが増えるのが特徴です。適切な処置としては、感染源を取り除く根管治療やかみ合わせの調整、抗生物質の投与などがあげられます。いずれの場合も症状の早期発見・早期治療が重要で、放置すると歯を失うリスクを高めることになるため注意しましょう。
親知らず
親知らずは、口の奥に生えてくる第三大臼歯を指しますが、ほかの歯に比べて位置や生え方が不完全な場合が多く、痛みや歯ぐきの腫れを引き起こしやすいことが特徴です。斜めや横に生えてくると、歯と歯ぐきの間に食べかすが溜まりやすくなり、細菌の繁殖で虫歯や歯周病が進行しやすい環境を作り出します。
痛みが強くなると、口を開けづらくなり、頬が腫れることもあります。親知らずが原因の痛みの場合、抜歯や切開が検討されるケースも少なくありません。抜歯のメリットとリスク、現在の歯の状態などを歯科医師と相談したうえで、最適な処置を選択することが大切です。
ひび割れ
歯のひび割れ(クラック)は、一見すると目立たない小さな線でも、噛むときにしみや痛みを引き起こす要因となります。強い衝撃を受け、長年にわたる噛み合わせの負担が蓄積することで、表面や内部に亀裂が生じる場合も。ひびが浅い段階なら、詰め物やかぶせ物などの対処で痛みを軽減し、歯を残せる可能性が十分にあります。
一方、亀裂が深部にまで達していると抜歯を余儀なくされるケースもあるため、早期発見が重要です。歯に違和感を覚えた際には、歯科医院で詳細な検査を受け、ひび割れの有無や進行度をチェックすることが欠かせません。
非歯原性歯痛の種類

非歯原性歯痛とは、歯そのものに問題がないにもかかわらず、ほかの要因で生じる痛みを指します。ここでは以下の9つについて、原因や特徴を解説します。
- 関連痛
- 筋・筋膜性歯痛
- 神経障害性歯痛
- 神経血管性歯痛
- 上顎洞性歯痛
- 心臓性歯痛
- 気圧性歯痛
- 精神的なストレスによる痛み
- 突発性歯痛
詳しく見ていきましょう。
関連痛
関連痛とは、実際の痛みの原因がある部位とは異なる場所に、痛みが生じる現象を指します。たとえば耳や顎関節、首や肩まわりの筋肉などに問題がある場合でもその痛みが歯に伝わり、あたかも歯が痛んでいるように感じられることがあります。
痛む場所が離れているため歯のトラブルのように見えますが、歯科検診やレントゲン検査で異常が見つからない場合はこの関連痛の可能性も。また、虫歯治療を何度行っても痛みが改善しないときも、このケースが疑われる場合があります。
筋・筋膜性歯痛
筋肉や筋膜の異常に起因する歯の痛みを、筋・筋膜性歯痛と呼びます。顎周辺や首、肩などの筋肉が緊張や疲労で硬くなると、痛みが歯や歯ぐきに伝わり、歯科治療では改善しにくい症状が続く場合も。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取り続ける習慣や、咬み合わせが悪いまま放置している状況などが原因としてあげられ、慢性的な緊張が蓄積されることで痛みが生まれます。歯の検査では原因が見つからないため、何度歯科を受診しても「問題なし」といわれてしまうケースも珍しくありません。
神経障害性歯痛
神経障害性歯痛は、末梢神経や中枢神経が何らかの理由で損傷を受けた際に起こる痛みを指します。突発的に激痛が走り、反対に持続的な鈍痛を感じるなど、個人差が大きいのが特徴です。原因は、歯科治療や外傷による神経損傷のほか、帯状疱疹などのウイルス感染、あるいは全身的な神経疾患が背景にある場合も。
レントゲンなどの検査ではとくに異常が見つからず、痛み止めが効きにくいケースが多いのも厄介なポイントです。診断や治療には神経内科やペインクリニックなど、歯科以外の専門医との連携が求められます。
神経血管性歯痛
片頭痛や群発頭痛といった神経血管性の疾患が原因で起こる歯の痛みを、神経血管性歯痛と呼びます。頭痛が発作的に起こるタイミングで歯が痛み出すという特徴があり、痛む位置も一定でないことがしばしばです。脳内の血管が何らかの刺激を受けて拡張し、周辺の神経を圧迫することで痛みが生じるため、歯のレントゲン検査では異常が見られません。
発作的に起こる強い頭痛のほか、吐き気や光に敏感になるなど、頭痛特有の症状を伴うことも多いです。治療は頭痛のコントロールが中心となるため、歯科医だけでなく神経内科や頭痛専門外来の診断と併用して進める必要があります。
関連記事:虫歯で頭痛が起きることがある?原因を解説
上顎洞性歯痛
上顎洞性歯痛は、副鼻腔の一部である上顎洞に炎症が起きていることで生じる歯の痛みです。上顎洞が鼻や喉とつながっているため、鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)などのトラブルが原因で上の奥歯が痛み、押すと鈍い痛みを感じることがあります。膿や液体による圧迫が歯根部付近に影響を及ぼすため、レントゲン検査で大きな問題が見当たらない場合でも痛みを引き起こすのが特徴です。
口を開けると痛みが強くなるなど、症状の感じ方は個人差があります。治療には耳鼻咽喉科や呼吸器内科の協力が必要で、副鼻腔炎が改善すれば歯の痛みも和らぐケースが少なくありません。
心臓性歯痛
心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患が原因で起こる痛みを、心臓性歯痛と呼びます。心臓周辺の神経が刺激されると、歯や顎、首筋など離れた部位に関連痛として現れることがあります。特徴は、運動時やストレスを感じたときに痛みが増す場合が多く、休息を取ると自然に治まることがあるという点です。
歯科のレントゲンや口腔内検査で異常が見つからないまま痛みが続く場合、循環器系の検査を受けましょう。もし心臓性歯痛を見逃していると、重大な心疾患の発作を招き、命にかかわるリスクが高まるため注意が必要です。
気圧性歯痛
飛行機の離着陸や高地・深海などで急激に気圧が変化したとき、歯の内部や副鼻腔内の空気膨張によって生じる痛みが、気圧性歯痛です。まれに、抜歯後の傷口や治療後の歯に空気が入ってしまい、圧力変化により痛みを感じるケースも。
また、歯の詰め物やかぶせ物に隙間がある場合、気圧変化が伝わりやすくなるため、痛みが強くなることがあるのが特徴です。通常、地上に戻り気圧が安定すれば痛みが軽減するケースが多いですが、頻繁に気圧差を伴う環境にいる方は注意しましょう。
精神的なストレスによる痛み
精神的なストレスや不安が強いとき、歯に異常がないにもかかわらず痛みが生じる場合があります。これは自律神経のバランスが乱れ、痛みを感じやすい状態になっているからです。ストレスが原因で歯ぎしりや食いしばりが増え、咬合性外傷を誘発しているケースも考えられます。
また、不安定なメンタル状態が続くと痛みへの耐性が下がり、通常なら気にならない刺激でも強く感じるようになります。歯科検査では異常が見つからず、気になる症状が解消されない場合、心療内科やカウンセリングの活用を検討するのも1つの方法です。ストレスへのアプローチによって痛みが軽減されるケースも少なくありません。
突発性歯痛
突発性歯痛とは、特定の原因が明確に特定できないまま、突然発症し消えていく歯の痛みを指します。歯科検査やレントゲン、さらには身体的な検査でも異常が見つからないことが多く、痛みが持続せず短時間で治まる点が特徴です。痛みの強さや場所も人によってさまざまで、一時的に激しく痛む場合もあれば、軽い違和感のまま収まるケースもあります。
原因不明のまま繰り返す場合は精神的なストレスや神経系、筋肉の緊張などがかかわっている可能性があるため、状況や生活習慣をよく観察しましょう。症状が頻繁に起こり長引く場合は、歯科だけでなくほかの専門科と連携して原因を探ることが大切です。
非歯原性歯痛は何科を受診すればいい?

非歯原性歯痛を疑う場合でも、まずは歯科医院でレントゲンやCTなどの検査を受け、歯や歯周組織に問題がないかを確かめることが肝要です。
異常が見当たらないなら原因が歯以外にある可能性を視野に入れ、脳神経外科やペインクリニック、心療内科や口腔顔面痛の専門外来などを受診する選択肢が出てきます。これらの科はそれぞれ担当分野が異なるため、根本原因を解明するには少々時間や手間がかかるかもしれません。歯科医師と連携を取りながら必要な検査を進め、適切な科にかかることで、長引く痛みや生活への支障を減らすことが期待できます。
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まとめ

歯の痛みは必ずしも虫歯だけが原因ではなく、非歯原性歯痛や歯以外のトラブルが関係しているケースもあります。早期に原因を突き止め、適切な処置を受けるためにも、まずは歯科医院で検査を受けることが肝心です。
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この記事の監修者

院長 星元健佑
当院院長の星元健佑です。私が、診療において常に心がけているのは、「自分の家族だったらどの治療を選択するか」ということです。
治療法に関しては、でき得るすべての治療法のメリット・デメリットを丁寧に患者様にご説明した上で、ベストだと思う治療法をお伝えいたします。
しかし、最終的に決断されるのは患者様ご自身ですので、決して私の考えを押しつけるようなことはいたしません。
もちろん、自由診療だけをお勧めすることもありませんので、費用面でご不安に感じている方は安心して受診いただけたらと思います。
当院では、月に1回午後を休診にし、勉強会とスタッフのトレーニングを実施しており、スタッフ全員のスキルアップにも取り組んでいます。
また、口腔内スキャナーや歯科用CTなども活用し、専門的な診療を提供できる体制づくりにも注力。口腔内を総合的に診られるのが当クリニックの特徴です。
お口に関してお困り事があればお気軽にご相談ください。
〈略歴〉
私の歩みは、2016年に長崎大学歯学部を卒業したことから始まりました。2017年には鹿児島大学での臨床研修を修了し、特に口腔外科の技術を学びました。2018年はオパールデンタルクリニックで、インプラント治療やセラミック治療の技術を身につける機会に恵まれました。
その後、2022年にはカナダへ単身で渡り、国際的な視野でさまざまな知見を吸収する貴重な経験を積みました。
帰国後は、九州の複数の歯科診療所で実践を重ね、患者さま一人ひとりに寄り添った治療を学びました。
2024年からは、当院の院長として、皆さまの健康と笑顔のお手伝いができるよう努めています。